プッチョピアノ

中に二人います

自滅する洗濯物

洗濯物を洗い、干し、取り込み、たたむ。
ということが大嫌いだ。

上京してからそれなりに一人暮らしを続けているが、毎週末にやってくるこの作業が億劫で億劫で仕方がない。

常々、たった2日間の休みのために5日という時間を仕事で犠牲にするなんてバカげているじゃないかと思っているにも関わらず、2日の内のある程度の時間は一人暮らしを維持するために使わなければならない。
なんじゃそれ。いやだ。

今も昔も1日が24時間であることは変わらないはずなのに、たぶん、きっと、おそらく、現代の方がせせこましい。
圧倒的にやることが増えているからだ。
機械が人間の仕事を奪う、と言われだしてから何十年も経っているのにいつまでたっても残業は減らないし、それどころか無用なシステムの構築で仕事量が増えている。
エンターテインメントが増えることは歓迎すべきことなのかもしれないが、使用時間を割り振るという意味では仕事と変わらない。

通勤時、満員電車で過ごす時間はどれくらいか。
デスクワークをしている時間は?会議は予定通りに終わるか?帰宅できるはずなのに電車が止まっている。
仕事が終わらないと金曜日がくることすら怖い。

でもなんとか終わらせたぞ。

休日には、本を読もう。見たい映画がある。勉強したいこともあるんだ。写真を撮りにでかけるのもいいな。久しぶりに誰か誘って飲みに行こう。
せっかくの休日だ。5日がんばった自分を休ませてあげよう。

そして土曜日、一番始めにやることは洗濯だ。
洗濯しか選択肢がないから洗濯を選択するしかない。
だって一人暮らしだもの。

やっと洗濯終わったよ。今何時?
そうね、だいたい12時ね。

あぁ、午前中を使ってしまったのね。やる気半減。

このループ。
無限ループ。

なぜこのループ処理に入る時に処理条件を設定しなかったんだろう。
常にtrueじゃないか。
誰か早くbreakを入れて。だって私は次処理に集中してるから。

ところで、あの長寿で一躍時の人となった双子のきんさんぎんざんの、ぎんさんの娘さんたちをご存知だろうか。

四姉妹でいずれも90代らしい。もちろんご存命だ。
四人ともぎんさん同様に元気で、一人は車の運転だってしてしまうらしい。
毎日四人で集まって、昔話に花を咲かせて笑い合うのが健康の秘訣だとか。

あるテレビ番組で、それぞれの日常を簡単に紹介していた。

四姉妹の内の何番目の方だったのかは忘れてしまったが、90代だというのに、毎朝庭にでて物干し竿を掛け、洗濯物を干していた。

足取りはしっかりしているものの、竿を掛けたり重そうに布団を運んだりしている姿がやっぱり少し危なっかしい。

同じように不安を感じたのか、番組スタッフが声をかけた。
「大丈夫ですか。毎日大変ですね」
一瞬きょとんとした表情を見せた娘さんは、こう言い放った。

「こんなもん遊びじゃ。今は全部機械がやってくれる」

おっしゃる通りでございます。
もはや言葉の重みが違う。

億劫であることは変わらないけど、
せせこましくなってることは変わらないけど、
使用時間を割り振るという作業をしなければならないけど、
「面倒くさいこと」の基準を下げるとろくなことがない。

悲劇のヒロインになっても仕方ない。

それより「楽しいこと」の基準を下げて、いろんなことを楽しめた方が人生豊かになりそうだ。
肝に命じておこう。

とはいえ昨日見た映画ひどかったな。思い出したら腹立ってきた。

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