プッチョピアノ

中に二人います

見ろ!城がゴミのようだ!

一人暮らしを始めてから、まだ4年目に差し掛かったところ。
立地条件にも間取りにも満足していて、引っ越すつもりはない。おそらくまた更新の時期がくれば、その金額に二の足を踏みながらも結局は更新料を払うことになるだろう。
狭いし、家賃は高いし、ベランダに屋根はないし、お湯が出るのは遅いし、コンセントは少ないし、壁が薄い。
それでも諸々あって、気に入っている。

週末などにふと部屋を見回すと、物が増えたなとしみじみ思うことがある。

上京するとき利用したのは、よくある単身パックという引越業者のプランだった。さすがに薄っぺらのボストンバッグではなかったけれどサイズの決められた格子状のカートに詰め込める程度の荷物だった。

読み終わった本は実家に送っている。
ゴミは毎週欠かさずゴミ捨て場にだしている。
電子データで保存できるものは、極力そうしている。

でも今は、単身パック用カートがいくつ必要なのかわからないほどの物がこの部屋には散乱している。

服が増えた。
家電が増えた。
仕事用の本が増えた。

考えてみれば日々出かけて行ってはどこかから有益そうな物を見つけ、城の石垣をうず高くするような生活をしている。
会社と家との往復を繰り返しながらも、たまにアマゾンの奥地に分け入っては食指が動くままに物を増やす。
本屋に行っては、未読の本が積み上がっている部屋の片隅を記憶から抹消してレジに向かう。

物は所有欲を満たしてくれる。
自分の趣味嗜好を提示するための触媒となり、事実となってくれる。

ただやっと分かってきた。

引越しが億劫になっていくというのはつまり、纏っている着ぐるみが重く息苦しくなっていくということなんだ。
部屋をどんどん飾り付けして快適な空間を作れば作るほど、地震や火事に怯えるようになっていく。

「自分」という言葉が表すものには、「自分の物」も含まれる。
物が増えれば、自分が肥大化していく。
単に質量が増えるだけでなく、所持効果といわれる現象も起きる。
いわゆる愛着が沸くというような状態だ。

そうやって自ら荷物を重くして、負荷をあげていく。

両手に荷物を抱えているからドアノブに手を掛けられないような生活が本当に自分が望んでいた結末だったのかわからなくなってくる。

だから明日から、身軽を目指してみる。

[出し入れ]楽チン!クイック収納術 (PHPビジュアル実用BOOKS)

[出し入れ]楽チン!クイック収納術 (PHPビジュアル実用BOOKS)